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【ライター基礎講座 受講生コラム】サブカルオタク、ライターを目指す

私は大阪ものかき隊12期の田琴類。海外アニメ愛好歴25年、SFファンタジー愛好歴21年。洋画も好きなごく普通の人間だ。転職活動の傍ら、英語圏の作品やファンの考察を見て聞いて読むために英語を駆使する日々を送っている。今回はこの場をお借りして、とあるサブカルオタクがライターを目指すまでのきっかけを語りたい。

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去年の4月、私は仕事をやめた。とある会社の事務として働いて、優しい方々に首をきゅうっと絞められてボロボロになっていた。生ける屍のようになっていた自分は、心身に栄養を送り込むがごとく一日中趣味に没頭することで癒されていた。

ある日、海外アニメ界隈の一部が騒然としていた。とある作品の衝撃的な回が配信された日のことだった。自分もファンが次々と感想を投稿するのを一心不乱に読んでいた。他の人のコメントを読んでいるうちに、ふと思いついた。長文をアップしてみよう。

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ここ数年の英語圏の作品では、実際に起こっているできごとや、表沙汰にされないけど経験した人には理解できる辛さにスポットライトが当たることが多い。特に全年齢向けの作品では流血や暴力描写を避ける分、必要とあれば容赦なく主人公をそういった問題に対峙させる。

たとえばあるアジア風ファンタジーでは、ヒロインが敵との闘いでPTSDになってしまい、そこからもがきながら回復する様子が丁寧に描かれている。別のSFでは元ヒーローの少年が、父親によって普通の子供としての人生を奪われた事実を克明に描写。現代とつながりがある作品では、幼い頃に呪いをかけられた魔女が、彼女を治そうとインチキ療法にハマった母に振り回されるエピソードをコロナ下で放送した。

こうしたできごとを描写しながらも、物語の作り手は救いの手を差し伸べる。ヒロインはトラウマを乗り越え少女と両想いになり、元ヒーローは周りの人々に支えられて立ち直り、呪われた魔女はありのままを家族に受け入れられる。それは綺麗事かもしれない。だけど現実に起こっているできごとを取り上げて、救いの手を差し伸べられる物語に、癒される人はいる。

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だから自分と同じように作品が好きだと発信する人たちと、考えを共有してみたくなった。これまでも長い感想を数行の文章に要約して、何回かに分けてツイートすることは何度もやっていた。でも元の文章は長すぎると思って、誰にも見せず保存していた。サブカルの情報発信において映像や画像が好まれる昨今、わざわざ長文を読みたいと誰が思うだろう。でも中には好きな人がいるかもしれない。

そこでWordに書いた1ページほどの感想を、ネタバレしても大丈夫な人だけが読める形で投稿した。結果は予想外の反響だった。大評判、というほどでもない。でも作品のファンの人からは好意的な反応があった。意外なことに、内容の他に文章の読みやすさについて言及している人が多かった。初めて、自分は文章を書くのが得意だと気付いた。

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1週間後のオンライン飲み会で、大学時代からの友達にこの件をなんとなく話した。すると友人に「類ちゃん、そのジャンルでブログ書いてみなよ」と勧められた。そこで書いてみることにした。私のことをよく知っている人が言っているんだから、試してみるのも悪くない。幸いネタも時間も山ほどある。

飲み会の後、すぐに無料でできるブログサイトを探し出して開設。そこからは週に1回の頻度で海外アニメの考察を書くようになった。SNSで更新を知らせると、フォロワーが読んでくれる。自分が好きなことを通じて、好きなジャンルに少しでも影響が与えられることが、素直にうれしかった。

ブログを更新していくうちに、ある考えが頭によぎった。文章を書いて稼げたらどんなにいいだろう。失業するまでは大阪にとどまりたくて、とにかく働くことばかり考えていた。いくら努力しても苦手な事務作業をやっている自分は惨めだった。どうせ働くなら得意なこと、好きなことやできることでお金を得たい。挑戦するなら、仕事がない代わりに時間がある今のうちだ。

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そこでライターになる勉強ができる所を検索して、大阪ものかき隊に入った。12期生を募集している途中でタイミングもちょうどよかった。まだ入隊して三か月だが、多くのことを学んだと思う。中でも、趣味で文章を書くだけではなく、書けるジャンルを広げてお金にするという視点は、独学でライターを目指していたら考えてもみなかっただろう。

こうして私はものかき隊に入り、ライターとしての一歩を踏み出した。できることなら、ニッチな世界をどこまでも掘り下げていきたい。自分が好きなジャンルを含む、あらゆるマイナーだけど奥深くて味のある世界の魅力を伝えられるライターを目指したい。

30近くになって、ようやく私はやりたい上にできる仕事に出会えたのだった。





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