発達障害ライターが聞いてみた!身体・発達障害を抱える税理士が伝えたい「人生のテーマを見つける方法」とは

発達障害ライターが聞いてみた!身体・発達障害を抱える税理士が伝えたい「人生のテーマを見つける方法」とは

小耳症と発達障害-税理士ちょもさんの軌跡

 

-発達障害の診断を受けていますか?

2014年に、発達障害の診断を受けました。診断名は、広汎性発達障害です。今の診断基準だと、ASD(自閉症スペクトラム障害)に該当するかもしれません。

 

-どのような経緯で診断を受けましたか?

大学を卒業して、金融機関に就職しました。ですが自分には向いていないと感じ、3年で退職して税理士を目指すことにしました。毎日15時間、8時~23時頃まで勉強漬けの日々。しかし、全く休まず勉強を続けていたため不眠症になり、途中で倒れてしまったのです。

その時、家族のすすめで精神科を受診したのが、診断のきっかけです。

それまでの人生を振り返ると、気持ちが先行して無理をすることも多かったので、遅かれ早かれ受診していたのかな、とは思います。

 

-障害者手帳は取得していますか?

3級を取得しています。手帳を取得したのは、つい最近です。試験合格後、最初に入った税理士法人を数カ月で退職したタイミングでした。

残業が月200時間近くあり、身体が持ちませんでした。いわゆるブラックな環境ですが、税理士の世界では珍しい話ではありません。これからも税理士として働き続けられるのか、とても不安を感じました。そこで、障害者雇用も視野に入れた保険として障害者手帳を取得したのです。

幸い、転職先の税理士法人では、ある程度の配慮を受けながら勤務できています。

 

色々大変な業務ですよね投薬などの治療はしていますか?

毎日、服薬していますよ。今は、効くか効かないか最小量の処方です。

減薬のきっかけは、税理士試験の勉強をこれからも続けたい意思を担当医に伝えたことです。当時の担当医は、私の意思を尊重してくれました。

「今処方している抗不安薬は、筋肉を弛緩させます。筋肉の緊張をほぐすと不安は和らぎますが、集中するのは難しいです。理解や暗記はある程度、緊張状態が必要です。だから、あなたにはミニマムな量を処方します。」

その方針が、現在も続いています。

 

理解のある医師だったのですね。自分の発達障害の特性は、何だと思いますか?

こだわり、言い換えると「執着」ですね。

良い点は、一度納得したら努力を惜しまず徹底的に極めることができること。
困る点は、一度決めたことを中々変更できない、そのことに囚われてしまうこと。

先ほどの税理士試験の勉強が、良い例です。

特性の良い点が発揮できる「環境選び」と「環境づくり」が大切と思います。

具体的には、信頼できるアドバイザーを見つけること、自分に合った仕事(専門職)に就くこと、規則正しい睡眠や運動を習慣化すること、など。頼れるセーフティーネットを可能な限り整えることは、必須です。

「余裕」は安心を生み、自信に繋がります。
「焦り」は不安を生み、絶望に繋がります。

これらを意識するようになって、特性に振り回されることは少なくなりました。

 

初めて障害と向き合ったのは生まれつきの小耳症からだと聞いています。どのような障害なのですか?

簡単に言うと、生まれつき耳が無い障害です。聴力も、ほとんどありません。詳しく知りたい方は、Googleで小耳症(しょうじしょう)と検索してみて下さい。

約1万人に1人の割合、男性>女性、右耳>左耳>両耳、という傾向があります。

私は男性、右耳の小耳症ですので、最も多いパターンです。

普段は、左耳の聴力だけで日常生活を送っています。日常生活で困るのは、右側からの話し声が聞き取りづらいこと、イヤホンが左耳しか装着できないこと位でしょうか。

何らかの理由で片耳が聞こえない人は、世の中にかなりの数おられます。わざわざ口にしないだけで、中耳炎、突発性難聴…色々な原因があります。そんな背景もあるからか、小耳症(片耳)は身体障害者手帳の等級に該当しません。

ですので、私は身体障害者手帳を持っていません。

 

なるほど現在は手術したとお聞きしましたが、どのような経緯で行われましたか?

片耳が聞こえなくても日常生活にはあまり困らない、と先ほど言いました。しかし片耳が無い状態は、日常生活にかなり支障が出てきます。

有るべきものが、有るべき所にない…「違和感」があるのか、一目で分かってしまうのです。

幼い頃は「何で耳が無いの?」「変な耳だね。」「前世で悪いことしたの?」など、無邪気な言葉に傷付きました。

耳の形が無いなら造ればいい、というのはシンプルな解決法です。

両親は、私が生まれて「小耳症」と診断されてから「耳を造ってくれるお医者さん」を色々調べてくれました。インターネットもない時代、さぞ骨が折れただろうと思います。

実は「自然な形の耳」を造れる名医は、ほとんどいません。日本では、約3人。幸運にも、その中の1人の先生に手術して貰えることになりました。

耳の材料は、自分のお腹の軟骨(肋軟骨)です。成長するにつれて、軟骨は硬くなって加工が難しくなります。逆に、幼すぎると体力的に手術に耐えられません。

その結果、「10歳前後」が手術の適齢とされているようです。

 

手術を行う時、悩みましたか?

医師は、私の両親に「ちょも君が手術をしたいと思わないなら、手術はしない方がいい。」とアドバイスしたそうです。片耳が無いままでも、生きていけます。(実際にそういう選択をする人もいます)

極端な話、手術で耳を造るのは「見栄え」の問題とも言えます。医師は「君はどう感じる?怖いかい?」と、10歳の私の意思を尊重してくれました。

「自然に見える耳」を造れる名医とあって、病院には全国から手術を受ける子供が集まります。病室は同じ手術を受ける同年代の子供ばかりで、(自分以外に同じ障害を持った子がこんなにいる!)と、新鮮で本当にうれしかったですね。

手術を受けた子供の中には、今に至るまで20年来の親友もいます。

 

さまざまな経験を経て、ご自身の中で障害はどのような位置づけですか?

「負けてたまるか」という強烈な原動力でしょうか。

「自分にも優れている部分があることを証明したい」という思いがあるからこそ、勉強や資格取得など、自己研鑽を続けることは苦ではありません。

また、同じ障害を持つ人と繋がるための「パスポート」でもあります。

全くの初対面でも、同じ障害があると分かれば、打ち解けるのは「秒」です。

 

数字の裏にあるストーリーを感じる仕事-ちょもさんが税理士になったわけ

税理士とは、具体的にどんな仕事なのですか?

一言でいうと、あらゆる税金の専門家です。

主な仕事は、会社の決算書や確定申告書を作成することです。そのほか、社長の経営相談、銀行との融資交渉など、業務範囲はとても広いです。また、企業買収(M&A)、富裕層の資産運用など、専門性を活かして活躍できる場も多くあります。

税理士は「季節労働者」です。

12月~6月は、企業の年末調整、個人の確定申告、会社の決算が続く「繁忙期」です。7月~11月は、比較的落ち着いている「閑散期」です。

「繁忙期」と「閑散期」が、約半年ごとに交互に繰り返されます。

 

‐税理士にはどうやったらなれるのですか?

税理士になるには、税理士試験5科目に合格して、実務経験を2年積む必要があります。税理士試験は、毎年5万人の受験者に対して、最終合格者700人です。合格率は、約2%ほどでしょうか。

ちなみに私は、勉強をスタートして5科目揃えるのに5年を要しました。継続できた理由として、父が研究者、母が通訳・翻訳家で、専門性を極めることに理解があったことが大きいです。ある程度の難易度の国家試験を受けるなら、家族の理解と支えは、必須です。

「合格まで、5年もかかってしまいました。」と合格祝賀会で何気なく話したら、

「5年?私は、9年かかりましたよ。」と真顔で返されたことがあります。

合格するまで10年以上というのも、特に珍しい話ではないのです。

 

税理士を目指したきっかけは何ですか?

新卒で入行した金融機関での経験です。職場の雰囲気や人間関係には馴染めませんでしたが、財務分析の業務は好きでした。

財務分析は簡単にいうと、融資をする際に「この会社は貸したお金を返済できそうか?」決算書をもとに分析することです。

信用データベースに決算書の数値を入力すると、その会社の大まかな格付けは分かります。しかし、それ以上の分析は、融資担当者の知識や経験次第です。

自分が入力した数値が、どう分析されて、その格付けになったのか?数字の裏にある実態を知りたい・深めたいと思ったのが税理士を目指すきっかけでした。会計や税金に関する知識を体系的に身に付けられる資格…として候補になったのです。

 

税理士は、どのような経歴の方が取得を目指しているのでしょうか?

税理士を目指す人は、大きく2つのパターンに分かれます。

1つ目が、自分の親や身近な人が税理士で、その背中に憧れて目指す場合です。
2つ目が、会社が合わないと感じた人が、セカンドキャリアとして目指す場合です。

2つ目のパターンが大半で、私もこれに該当します。

前職は、企業の経理、銀行、証券会社、飲食、エンジニア…色々な経歴の方がいます。そういう方々の話を聞くのは、面白いですよ。

若手(20~30代)は、税理士全体で約10%です。残り90%は、40~80代です。どう解釈するかは人によりますが、セカンドキャリアとして目指す余地は大きそうです。

 

セカンドキャリアとして、税理士を他の方に勧めますか?

税理士という「仕事」は、「セカンドキャリアとして、充分アリ。」とアドバイスします。

税理士「試験」に関しては、「止めた方が、幸せになれるよ。」とアドバイスします(笑)

私は「2年で最終合格しよう」と頑張って、合格まで5年かかりました。「手堅く5年で取ろう」と考えたら、合格まで10年はかかります。

いきなり資格予備校の説明会に行っては、駄目ですよ。一番良いのは、最近の試験合格者に話を聞くことです。予備校のパンフレットに載っていない生の声を聞いてから、決断しても遅くないです。

 

実際に税理士の業務を経験してどう感じましたか?

イレギュラーな業務が、非常に多いです。

決算書を作成している時に、「融資用の資金繰り表をすぐ作って欲しい」という社長からのお電話。報告書を書いている時に、税務署や年金事務所、銀行からの問合せの電話。

日々、やるべき業務と優先順位が目まぐるしく変化します。

 

仕事にやりがいはありますか?

1人で担当した決算業務で、社長への決算報告会が終わったときは格別です。

「ちょもさん、いますか?」と電話で直接お問合せ頂くのも、うれしいです。

1年目の目標は「倒れずに生き残ること」でした。何とか達成できてホッとしています。

2年目は、経験を重ねて手際よく。そして社会保険や登記など、知識が足りていないところを補っていきたいですね。

 

 

障害の克服とテーマを見つける-ちょもさんの生きづらさ解消法

ちょもさんは、発達障害当事者が生きづらさを克服するための方法は何だと思いますか?

生きづらさは、克服するものではなく「受け入れるもの」と思っています。今までの人生を一度、棚卸ししてみるとヒントがあるかもしれません。

私は、発達障害に関する自己分析ノート「自分の取扱説明書」を書いています。誰かに見せるものではなく「自分のことを自分で知るために」です。

 

これは、専門の医師でもここまで書けないですよね。しかも手書きなのがすごい!

最初から綺麗には書けません。何枚も推敲して、まとめたエッセンスですね。

1テーマにつきA4:4~6枚。
ファイルに全て保管していますが、全体でA4:100枚以上あるでしょうか。

時々読み返していると、「また同じ状態になっているな」と気付かされることもあります。

 

このような自己分析を、他の方はどのように実践すればよいでしょうか?

毎日、健康管理表を付けるのは、どうでしょう。

起床時間と就寝時間、気分を記録して、一言コメントを添えます。毎日続ければ、一週間単位で比較できるデータが貯まります。

ある出来事が睡眠にどう影響したか、睡眠時間が短いと気分がどうなるか、など新たな発見があるかもしれません。たかが記録、されど記録です。

 

発達障害を乗り越えるには、どのような心構えが必要だと思いますか?

乗り越える必要はない、と思います。発達障害は、一生関わっていく必要がある障害だからです。

発達障害の特性には、良い点・困る点の両方があります。
特性の良い点が少しでも発揮できる「環境選び」と「環境づくり」が本当に大切です。

繰り返しになりますが、

「余裕」は安心を生み、自信に繋がります。
「焦り」は不安を生み、絶望に繋がります。

あと、「すみません」を「ありがとう」に言い換える習慣は、おススメです。

「××してしまって、すみません」 → 自分のこと
「〇〇してくれて、ありがとう。」 → 相手のこと

あえて「ありがとう」と言うことで、人の良い面に気付き、視野が広くなります。

 

得意なこと、すなわち「人生のテーマ」を見つける方法は何だと思いますか?

「人生のテーマ」というと壮大ですね…。

まずは自分の「特性」が何か、言語化するのが第一歩だと思います。次にその特性が、良い方に出たら?困った方に出たら?を整理します。その上で、自分の力(特性の良い面)が発揮できるのはどんな条件や環境だろうか、特性の良い面を磨いていくにはどうしたら良いか、を考えると良いかと思います。

焦ることもあるかもしれませんが、スモール・ステップが一番の近道です。

 

今を精一杯生きれば、道が開ける-ちょもさんが伝えたいメッセージ

ちょもさんの今後の目標は何ですか?

今を精一杯生きること、家族との生活を大切にすること、です。

職場では「10年後にどうなっていたいか?」と問われますが、正直10年後を考える余裕はまだありません。目の前のことに精一杯取り組んで、日々のささやかな楽しみを大切にする。その一言に尽きます。

目標という道をあらかじめ設けず、「歩いた後が道になればいい」という考え方です。

 

最後に、この記事を読んでくれた方に一言お願いします

積極的に生きようとすると、辛くなります。

真面目に生きるのは素晴らしいですが、全てに対応しようとせず「自分にはどうにもならないこともある」と妥協することも、時には必要です。

妥協は、手放す勇気です。手放すことで「自分でもどうにかなる」範囲が見えてきます。

今の世の中は「勝ち組にならなくちゃ!」と煽る人がいるので、不安を感じやすいです。そんな時は一人で解決しようとせず、コミュニティなどの繋がりを作って対処しましょう。

 

自立とは、一人で生きるということではないからです。

みなさんの人生がより良いものとなるよう、応援しています。

Good Luck!

 

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