どーも、スンダヴです。
最近、iPhoneが壊れたらしく、どこにいっても「圏外」なので困っています。
今回の「発達障害×生き方企画」は、発達障害や愛着障害に苦しめられながらも、エリートが集う外資系コンサルティング会社にクローズ就労(障害を明かさず一般雇用として働くこと)として勤務しているAさんです!
「発達障害当事者が、クローズ就労で生き延びるためのノウハウ」を沢山伺いました!働き方に対するヒントを得たい当事者の方は、ぜひご覧ください!
Aさんのイメージ図(顔が似てるとのこと)
両親の期待に応えようとするも…Aさんを苦しめた愛着障害とは
–まず、発達障害としての特性を教えてください。
興味の対象が頻繁に移り変わる、集中力が続かない、元々取り組んでいたことをすぐに忘れてしまうなど、ADHD(注意欠陥・多動性障害)の特性があります。
良い結果につながることもありますが、トラブルを引き起こしがちです。
例えば、ピアノなどの習い事をしていた時も、椅子に座り続けることができず、断念しました。
あと、発達障害だけでなく、愛着障害もあります。
–愛着障害とは、具体的にどのような特性なのですか?
両親との関係性をうまく構築できなかったことが災いして、対人関係の不器用さ、精神的不安定さが現れる症状です。
僕の場合、対人関係において相手の気持ちを尊重しすぎてしまい、自分の気持ちや意見を伝えることがうまくできません。
例えば、母親に認められたいがために、幼少期に多くの習いごとをこなしていました。
大学時代には、「お前はどうしたいの?」と意見を求められる時に「みんなと同じでいいよ」と常に同調していたので、トラブルの原因となったこともありました。
–なぜ、愛着障害となったのですか?
幼少期に周囲から過度な期待を受けて育ち、「勉強しろ、いい大学に行け、大企業に就職しろ」と常にいわれ続けたからです。特に母親は、僕が傷つくような言葉でプレッシャーをかけることが多かったですね。
もしかすると、ASD(自閉スペクトラム症)のような特性を、母も抱えていたのではと思います。
僕が一族の子供の中で一番年長だったので、学歴意識の強い親戚からも「下の子の面倒を見ろ、良い成績を残せ、手本になれ」と言い聞かされました。
これらの言葉を僕は真に受けすぎてしまい、「周りの意思が何なのか」ばかり考えるようになったのです。
「自分の意思を表明するのは迷惑だからやめる」、「周りの人間にとって最高な自分は何か」が、僕の人生になりました。
学校では、学級委員といったあらゆる役職を率先して勤め、勉強も頑張って地元の進学校に進学。
ですが…そこで一度引きこもりを経験しました。
–それはなぜですか?
進学校なので、周りの人間はとても優秀でした。その中で、自分のアイデンティティがわからなくなったんです。最終的に、自律神経失調症と診断されて、学校に通えなくなりました。
数か月かけて徐々に回復してきましたが、夕方には憂鬱となり、翌朝は腹痛で学校に通えない…といった具合です。
結局、当初目指していた国公立の進学はあきらめ、私立の大学に進学しました。
–苦労されたんですね…
大学は卒業して就職まで行きましたが、働き出してから躓きました。
頭を働かせることが苦手ではありませんが、上司からの指示をすぐ忘れる、衝動的に行動してしまう、わかってないのに「はい」と言ってしまうといったことが頻発し、上司からの信頼を失ったんです。
前提を崩されるのが苦手で、前日に指示されたことが急に変わったりすると、完全に思考がストップしてしまいます。
出世コースからも外され、睡眠障害となってしない、心療内科で相談。
そこで、「ADHDです」と発達障害の診断を受けました。
–その後はどうされましたか?
ストラテラによる薬物療法と、認知行動療法によるカウンセリングを始めました。
現在は多動が収まるなど効果が見られますが、会社は退職することに。
ただ、特徴や特性が分かることで、「自分が頑張って、他の苦しんでいる人たちに何かが出来るかもしれない」と逆にポジティブになりました。
コツコツ努力を積み上げることは得意だったので、「ダメダメからましになる、一定の領域に関しては戦えるようになるはず」と感じたのです。
–診断をきっかけにして、人生を見つめなおしたんですね
その後、弟も発達障害だったので、勉強や情報の集め方を教えてもらいました。発達障害のことをもっと知りたいと感じ、発達障害バーで当事者と交流もしましたね。
その結果、「発達障害で苦しい部分もあるけれど、みんなすごいといえる部分を持っている」と学びました。捉え方、周りの支え方、人との向き合い方で全然変わると実感したのです。
個人的には、悪評がすぐ広まる中小企業ではなく、人数の多い大企業で活躍できると思います。
きっかけは手塩に育てた後輩-Aさんがコンサルティング会社に入社するまで
–優秀な方も多い外資系コンサルティング会社で2年以上勤めているとお聞きしましたが、入社したきっかけは何ですか?
細かいミスはするし忘れ事は多いしと前職では散々でしたが、唯一後輩に対する教育には自信がありました。物事を理解するのは遅いですが、理解したものを人に教えることは得意だったからです。
退職してからしばらくして、かわいがっていた後輩がとある外資系コンサルティング会社に入社すると聞きました。
僕も前々からその会社に興味があったので、「入社したい」と意思を伝えると、面接の場を用意してもらえることに。
いわゆるリファラル採用(社員が人材を紹介する採用方法)というやつです。
–選考は、どのように行われましたか?
一次選考から役員クラスの人間が面接に応じるなど、ガチガチでした(笑)
ただ、しゃべるのは好きで、相手の問いにどうこたえるか考えるのも得意だったので、頑張れましたね。
やりたいこと、これまでの経験 専門性を身に着けて貢献できることなど、色々な武器をアピールして、この会社のプロジェクトに貢献できると語りました。
最終的に採用が決まり、現在も働いています。2年ほど経ちましたが、同じ時期に入った社員はちらほら退職しているので、生き残れているほうだと感じますね。
–発達障害や、睡眠障害のことは話していますか?
一切話していません。なので、今は完全にクローズ就労です。
今日から出来る!Aさんが開発した「クローズ就労生き残り術」
–発達障害およびクローズ就労で勤務するのは大変だと思いますが、どのような工夫をしていますか?
重要なのは、「自分の発達障害の欠点を道具で補う」、「特性を許容してもらう上司を死んでも離さない」ことです。
道具に関しては、メモ帳・スマートフォンのリマインダー・アップルのスマートウォッチの3種類を使います。
–なるほど…それらをどのように活用しますか?
まずメモ帳で、上司に言われたことや、とっさにひらめいたアイディアを書き込む習慣を身に着けます。現場で素早く出せるよう、一瞬ですぐに出せる小さいものがおすすめです。
自分で分かればいいので、落書きやイラストでもかまいません。とにかく、「書く行為」を実行して、自分が考えたことを後で拾えるようにしてください。
–その後はどうするんですか?
メモ帳に書いたことを、5W1H形式で、スマートフォンのリマインダーに残します。
5W1Hで残すことが重要です。
例えば、メモに「上司に報告」と書いてあった場合、このように分解します。
1.When(いつ)報告する?
2.Where(どこで)報告する?
3.Who(誰に)報告する?
4.What(何を)報告する?
5.Why(なぜ)報告する?
5.How(どのように)報告する?
5W1Hの内容を口でつぶやきながら、リマインダーに残していくのも効果的です。余裕があれば、「それをやったらどうなるの?」までリマインダーで整理しておきましょう。
–分解すれば、仕事やアイディアの進め方が分かりやすいですね!
分解をすると、内容に関する疑問点に気づきます。
「上司に報告」なら、こんな感じです。
1.そういえばいつまで報告って言われてないな
2.自分一人で報告する?それともほかの人と一緒?
3.口頭で報告するだけ?それとも書類?
この疑問点を、上司に再度確認してください。
再度確認して分かったことをもとに作業を進めれば、誰でも最低限の仕事はできるようになります。
–なるほど…ただ、現場ではメモ→リマインダーを残す時間がない場合もありますよね
そんな時は、アップルから発売されているスマートウォッチの出番です。
「ヘイ、siri」と口にすればsiri(アップル社製品に搭載されているAIアシスタント)を呼び出せるので、口頭で「○○をリマインダーして」と言えば記入できます。
これ以外にも、スマートウォッチには2つ役割があります。
1つ目が、バイブを使った目覚ましです。腕に装着した後アラームを設定して寝ると、バイブで確実に起きることができます。普通の目覚まし時計より、はるかに効果が高いです。
2つ目が、これもバイブ機能を使うのですが、1時間に1回アラームを設定して行う思考リセットです。ADHDの多動で思考がよくこんがらがるのですが、1時間に1度アラーム機能でバイブを鳴らすと、思考をリセットして集中力が戻ります。
例えば、お昼時に昼食をとるとぼーっとしてる時、バイブを鳴らして「仕事に戻るぞ!」と切り替えられるのです。
–すごい!これまでなかったライフハックですね
メモとスマートフォンのリマインダー(時間がないときはスマートウォッチ)でやるべきことを5W1Hで分解→浮かんだ疑問を上司に確認する
これをやれば、上司にダメな奴だと言われようがないんです。
上司にやれと言われたことを自分なりに整理し、上司に相談することで初めて仕事が成り立ちます。
–なるほど…ただ、仕事の内容を聞き返すと「なんでそんなことも分からないんだ!」となりませんか?
確かに、「こういうことですよね」っていうことを聞きやすい上司ではないと意味がありません。僕も上司に質問をするのが怖くて躊躇してしまい、怒られた経験がたくさんあります。
そうならないためには、どんな形でもいいから、話しかけやすい上司を見つけることが大事です。何を問いかけても笑われない、真剣に聞いてくれる上司を見つけてください。
上司がいなければ、同僚や後輩に相談してみるのもおすすめです。同僚や後輩に仕事について相談すれば、責任を良い意味で分担できます。
「上司から○○と言われたけど、自分は○○と思う。合ってるかな?」と質問すれば、真剣にアドバイスしてくれるはずです。
とにかく、誰でもいいので離しやすい相手を見つけ、離さないようにしてください。
–たまに「同じようなことを聞き返すな!」と意地悪なことを言う上司もいますが、対策はありますか?
2つあります。
1つ目が、「指示を受けたらなるべく早い段階で質問する」です。質問というのは、早ければ早いほど、ハードルが下がります。「こんな短期間だと、考えをまとめられないこともあるよな」と、人間は考えるからです。
個人的には、5分以内に再質問するのがいいですね。
指示を受けたら「5分以内に再質問する」とリマインダーに記録し、5分間じっくりと考えて、上司のもとに行きましょう。
2つ目が、上司への質問に自分の考えや意見をプラスすることです。例えば、「定例会の議事録を誰かが記録してるはずだから、まとめて得意先に送っといて」という指示があったとします。
質問する際に、「定例会の議事録をまとめて送ればいいんですよね?」とそのまま聞き返すと、怒る人もいるでしょう。
しかし、
「定例会の議事録をまとめてるんですけど、記録している人って○○さんですよね?」
「定例会の議事録を送る得意先って、○○で合ってますよね?」
「議事録のフォーマットは○○の形式で送ろうと考えているんですけど、合ってますよね?」
のように、自分の考えや意見をプラスすれば、怒られないんです。
これは、高齢の上司ほど効果があります。
このようなやりとりをしておけば、別の上司に「議事録ちゃんと送った?」と聞かれても、「今フォーマットをどうするか上司の○○さんと相談中です」のように責任を分担できるのでおすすめです。
「責任転嫁するな!」とか怒ってくる人がいたら、それはパワハラなので逃げましょう(笑)
–コンサルティング会社だと目標やノルマも厳しそうですが、どのように乗り越えていますか?
これに関しては、ほかの社員に仕事や作業を割り振って、良い意味で「自分一人だけの仕事にしないこと」が求められます。
「絶対に自分だけでやるべき仕事」ってないと思うんです。任せられることは全力で任せて、自分の意見も添えながら地道に続けていけば、成果を出せると思います。
—昇進を目指す場合は、どういったことが重要だと思いますか?
究極的には、昇進の有無を決める上司と仲良くなることです。そのためには、「自分の弱みを見せる」のが一番効果的ですね。
ただし、発達障害という言葉は使わずにです。
「実は昔から人と苦手なんです…。○○さんは人と話すのは得意ですか?若いころにやっていたいた工夫はありますか?」
こういう風に聞けば、たいていは「可愛いやつだな」と思って、目をかけてくれます。相手が「実は俺も人と話すが苦手でなぁ…」と自分の弱みを話し始めたら、心を開いてくれている証拠です。
自分の弱みは、人に好かれるためにどんどん出したほうがいいですね。
もしミスをしても、「あいつは元々人と話すのが苦手と言ってたから」とフォローしてくれる場合もあります。
自分の出っ張っている部分を探す-Aさんが発達障害当事者に伝えたいこと
–ツイッターでは「ADHDだけど外資コンサルのアライさん」として活動してますが、個性的なアカウントですね
昔「けものフレンズ」というアニメがブームになったのですが、そこに登場する「アライさん」というキャラクターに、注目が集まった時期がありました。
天真爛漫で常に頑張っているアライさんのツイッターアカウントを作って、「普通のアカウントでは話せないようなことを話す」ことが流行したんです。
なんか面白そうだと思って初めて、今も継続しています。
質問などある方は、ツイッターアカウントから受け付けますよ。
–最後に、この記事を読んでくれた方に、一言お願いします。
あれができない、これができないで悩んでいる当事者は多いと思いますが、得意な部分は絶対あると思います。
僕も、最初得意なことは「エクセルのショートカットになじむのがうまい」ぐらいしかありませんでした。
それが、表作るのが早い→綺麗に作るのが早い→上司に認められる資料を作れるのがうまいと発展していき、今では自分の強みです。
発達障害は良くも悪くも凸凹が強いので、「自分の出っ張ってる部分はなんだろう」を考えることから始めましょう!
まとめ
・メモ+スマートフォンのリマインダーorスマートウォッチで5W1Hをまとめ、上司に気になった部分を質問する
・質問はなるべく素早く、自分の考えや意見を付け加えて行う
・仕事や作業は他の人にできるだけ割り振り、責任と負担を分散させる
・弱みを開示し、自分の質問を真剣に聞いてくれる上司と仲良くなる
発達障害当事者がクローズ就労で生き残るための作戦です。
明日から使ってみましょう!
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