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元イタリアンシェフが新年に語る、イタリアの思い出話

新年あけましておめでとうございます。元イタリアンシェフのジーンイケダです。

私はライターになり初めての正月を迎えております。
本年もどうぞよろしくお願いします。

年初の記事は、イタリアの話をしようと思います。

私の思い出話に飽きてしまうかもしれませんので、付録として文末にパスタ作りの手順を載せました。おせちのごちそうに疲れ気味のお腹にちょうどいい、優しい味のパスタです。ぜひ作ってみてください。

目次

突然のイタリア研修旅行

どんな経緯で行く事になったのかを話さないと後に続きませんので、働いていた店の話から始まる前説が長くなることをご了承ください。

私は料理の仕事を始めて間もない23歳の時、旅行費用は勤めていたお店持ちで、イタリア研修旅行に行く機会に恵まれました。

勤め始めてからそれまでの3年半、ボーナスが出なかったので、かかる旅費はその補填という話でした。私は飛行機が苦手ですが、こんな幸運は滅多にないと思い、有難く渡航させていただきました。

1年の修行でいきなりチーフに

その店は、私が20歳で就職して1年目くらいの時に、2軒目の店を出すことになったのですが、その新店のキッチン責任者に、まだ丁稚修行中だった私が任命されたのです。

人手が足りないことは十分承知していましたが、本店のシェフの下で1年しか修行していない私には、その任は重過ぎました。

しかし命じられた以上それを全うするしかありません。

私は四苦八苦しながら、チーフと呼ばれるポジションを、なんとかこなそうと必死に頑張りました。でもどうしても乗り越えられない壁があります。

それは「これでいいのだろうか?」という疑問です。

1年の修行経験しかなく、身近に教えてくれる人も居なくて、本物のイタリア料理も食べた事のない当時の私には、自分で作った料理に自信が持てなかったのです。

ビクビクしながら料理する日々

数少ないイタリア料理の本を買い求め(当時書店で扱っていたイタリア料理の本、5冊ほど全て)書かれているレシピ通りに作りますが、本当にこの味で良いのかどうかが判らない。

もちろん味見はします。自分では美味しいと思うので、お客様に出しますが、「こんなもんイタリア料理と違う!」と怒鳴られるのではないだろうか、と内心不安でビクビクしていました。

お客様の方が絶対にイタリア料理に詳しいことは間違いありません。始めの1年間はかなり神経をすり減らす日々でした。

私が幸運な研修旅行を引き当てた理由

2年目になると、お客様の良い評判も聞くようになり、誰からも怒鳴られる事なく無事に仕事は進み、それなりの自信は付いてきましたが、それでもやはり本場の味を知りたい気持ちは大きくなるばかりです。

そしてチーフとして2年半ほど経った時、研修旅行の話をいただいたのです。私の気持ちを汲み取ってくださったオーナーの計らいなのでした。

イタリアは美味しい!

いよいよイタリア上陸です。私はイタリア語を話せませんでしたが、レストランやバールなど飲食店に入れば、メニューは読めます。

注文は指差しで通じましたので、特に問題はありませんでした。それに研修ツアーは料理人10数名のグループでしたので、半数くらいは言葉ができる人が居ました。ですから史跡や美術館などの観光も困ることはありませんでした。

でも残念ながら、観光はあまり記憶には残っていません。美味しくてボリューム満点な料理の印象が強すぎて、それ以外のことはすっかり忘れてしまいました。

私は通常、人の2倍ほど食べる大食漢でしたが、イタリアにいた間、ずっと満腹状態だった記憶しかありません。そして何を食べても美味しかったことだけはよく覚えています。

イタリアにはイタリア料理は無い?

イタリア料理というと、ニンニク、トマトソース、ハーブなどを使った料理を連想しますが、これは日本に最初に紹介されたイタリア料理がそれらを使うことの多い南イタリアの料理だったからです。

ところ変わって北イタリアではトマトやニンニクを全く使わない料理もたくさんあります。むしろほとんど使わないと言えます。

パスタも南イタリアではスパゲッティに代表される乾麺が主流ですが、中部から北イタリアでは、手打ち麺や詰め物パスタが主流になります。

このようにイタリアでは、ミラノ料理、ローマ料理、ベネッツィア料理、ナポリ料理、などそれぞれ地方や街によって特色ある郷土料理が数多くあり、イタリア料理と呼ばれる料理はありません。それらを総称して日本人がイタリア料理と呼んでいるにすぎないのです。

よく考えると、日本でも北と南では特産品や食材、調理法や料理が変わります。そして似たような料理でも、味付けや材料は少しずつ違いますね。それと同じことなのでした。

料理というのは、その土地に根差した文化だという本質的な事に気が付く事ができました。

食卓の目的を知る

イタリア人はとても時間をかけて食事をします。大声で笑ったり身振りを加えたりしながら、同席者との時間を、心の底から楽しんでいました。それまで早食いを美徳として、食事に時間をかけることのなかった私には、とても大きなカルチャーショックでした。

食卓の目的は、テーブルを囲んだ人々と、美味しい料理やワインとともに、人生の一部を共有することだと初めて感じることができました。

本物に触れて学んだ本質

私にとってこの研修旅行は、短期間であっても、やはり本場で感じることがいかに大切かを知った経験でした。

料理の本質と食卓の目的というとても重要な二つを学ぶことができたからです。

2年半本物に憧れ続けた体験があったから、よく理解できたのかもしれませんが、本物に触れることが、それを理解する近道だということは間違いないでしょう。

それでは次のイタリア話をお楽しみに。チャオ!


おまけ スパゲッティ・ポモドーロ(トマトソースのスパゲッティ)の一番シンプルな作り方

①スパゲッティは90gを1人前とする。 水900ccを鍋に入れ火にかける。沸騰してきたら塩9gを加え、スパゲッティをパラパラとバラけるように入れる。時々かき混ぜる。

②別の鍋にオリーブオイル、ニンニクを入れ弱火にかける。ニンニクにじっくり火が通る様 に炒める。香りが出て軽く色付けば取り出す。

③缶詰めのホールトマト180gを潰して鍋に加える。強火にかけて沸いてくれば弱火にして煮詰める。半分くらいまで煮詰まれば塩で味を調える。

④袋に書いてある時間より、1分ほど早めに茹で上げたスパゲッティを、しっかり湯切りしてソースの鍋に加える。ソースの中でスパゲッティを煮るようにして和えながら、好みの固さに仕上げる。

⑤そのまま、またはお好みでパルミジャーノ・レジャーノをかける。

ボナペティ―ト!!

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