元映写技師がお勧めする、ライターの世界観を広げる映画10選

目次

はじめに

私はライターになるずっと以前に、映画館で映写技師として働いていました。
業務として映画を観る以外にプライベートでも映画を観ていて、当時は年間200本以上鑑賞した年もあります。おかげで映画関係には、かなり強くなりました。

その後、紆余曲折の末にライターを志した時、今までの経験がライティングに生かせるのではないかと思ったのです。

ライターが世界観を広げるべき理由

ライターにとって、面白い文章が書きたいという思いは共通しているのではないでしょうか。

では、面白い文章とは何なのか?

これには様々な定義があるでしょうが、なかでも新しい視点や意外性といった要素は外せないように思えます。なぜなら、それらは読者の興味を引き、読む事を飽きさせないからです。
では、どうやってそれらを身に着けるのか?それには自分と違う世界に触れる事、自分自身の世界を改めて認識する事が有効だと考えます。そのための手段をいくつか挙げてみます。

一つ目は旅行です。
海外なら尚良いですね。今の生活と全く違う世界、そこで生きる人たちは貴方の認識を揺さぶり、成長させてくれるでしょう。しかし、それには時間も費用もかかります。海外では尚更ですね。

二つ目は対話です。
これはただの雑談や議論とは違い、お互いに相手の意見を否定せず、自由に話す、一定のルールに基づく話し合いです。ダイアローグとも呼ばれますね。この方法も自分と他人の認識を明確にし、深く掘り下げることが可能です。
ですが、それなりに準備が必要ですし、その成果は参加者とその場の状況によって左右されます。

他にも方法はあるかと思いますが、長年映画に親しんできた私が提案したいのは「映画の鑑賞」です。映画は一つの世界観そのものを、観客に体験させてくれます。感受性には個人差があるものですが、優れた作品には、その差を越えて訴えかけてくる力が宿っています

映画館での鑑賞がベストですが、近年ではサブスクリプションの発展により、手軽に鑑賞する事も出来るようになりました。これが自分とは別の世界観に触れる、最も容易な手段であると確信しています。

世界観を広げる映画10選

そして私が勧めるのは、カルト映画と呼ばれるカテゴリーの映画です。
低予算、マニア向け、独特な世界観、この三拍子が揃った映画は、いずれも曲者ぞろいですが、それ故に貴方の世界観を激しく揺さぶり、新しい視点や意外性についてのヒントを与えてくれます。

私は10年以上の映画館勤務を通して、数々の作品に触れてきました。
そのなかで印象に残っている新旧カルト映画10作品を紹介します。

「ロッキー・ホラー・ショー」(1975年)

(2016年のテレビリメイク版は別物ですので注意)
正直始めの方は退屈ですが、この映画の主役であるフランクン・フルターが出たとたんに全てが輝きだします。時代を感じさせないキャラクターたちの魅力。セットも撮影技術も高くないのにそれが全く気にならないのが不思議ですね。
タイトルにホラーが入っていますが、残酷なシーンは殆どない、コメディタッチのミュージカルです。
いや、普通のミュージカルには収まらない何かが、この映画には宿っています。観た人を無性に駆り立てるような、何かが。

「ファンタスティック・プラネット」(1973年)

フランスのルネ・ラルー監督によるアニメーション映画。一度見たら忘れられないほど独特の画風は、好き嫌いの分かれる所かもしれません。
この映画を観たスタジオジブリの宮崎駿監督は「ヒエロニムス・ボッシュの絵みたい」「美しくもおぞましい」と本作の美術を評価していました。
切り絵アニメーションによる奇妙な動きも、70年代のサイケデリックな音楽も、こちらの不安と緊張を煽ります。それが本当に素晴らしい。
この素敵な悪夢を是非、体験して頂きたいです。

「ヴィデオドローム」(1983年)(グロ注意)

デイヴィッド・クローネンバーグ監督の代表作。幻想と現実の区別がなくなる恐怖を描いた作品で、結構グロテスクなのでそこは要注意です。
しかしテーマ自体は今日でも通用するもので、色褪せない魅力があります。80年代のメディアはビデオでしたが、現在のスマホやSNSにもそのまま当てはまる感じです。
SFXも味がありますね。

「イレイザーヘッド」(1977年)(グロ注意)

デヴィッド・リンチ監督の長編デビュー作品。「エレファント・マン」、「ツイン・ピークス」、「マルホランド・ドライブ」などの個性的な作品で知られる監督ですが、彼のエキスが一番濃厚なのはこの作品だと思います。
グロテスクな表現のなかに垣間見える哀しさと美しさが、なんともいえない感動を呼び起こします。

「田園に死す」(1965年)

寺山修二が監督した、個人的な世界観を全開にした作品で、幻想的というかストーリーはあって無いようなものですが、その分イメージは強烈です。
それは今の多数のクリエーターにも影響を与えるほどですが、ここまでくると呪いに近いものを感じますね。

「盲獣」(1969年)

増村保造監督による江戸川乱歩作品の映像化。なんといっても巨大な女体の異様なセットに度肝を抜かれます。登場人物も3人だけ。緊張感が漲りつめています。
この監督の作品には他にも「卍」や「刺青」などの傑作がありますが、カルト的な要素はこの作品が一番ですね。

「アギーレ 神の怒り」(1972年)

ヴィルナー・ヘルツォーク監督とクラウス・キンスキー主演のコンビによる、終わりのない夢を見せられているような映画です。
同じコンビによる「フィツカラルド」はスペクタクルなエンタメ作品でしたが、こちらはとことん暴力的で、内省的で、観ていて嫌になりつつも目が離せないのです。二人の狂人、いや天才が濃厚に絡み合って成しえた芸術なのでしょう。

「グラン・ブルー」(1988年)

「レオン」や「フィフス・エレメント」で有名なリュック・ベッソン監督の初期の傑作。公開当時はカルト映画のカテゴリーに収まっていましたが、その後に(マニアからすれば残念な話ですが)高い評価を獲得しました。「ブレードランナー」などと似たパターンです。
日本で公開された時のタイトルは「グレート・ブルー」。地方都市の劇場で鑑賞した際、休日にも関わらず観客が5人程だった事と、画面一杯に広がった深く美しい青色は、今でも覚えています。

「マルコヴィッチの穴」(1999年)

「俳優ジョン・マルコヴィッチの頭に通じる穴を見つける」と、書いていてもよくわからない内容を、見事に映画にしてしまいました。こういう奇跡というものが世の中にはあるんですね。

「ヘドヴィグ&アングリー・インチ」(2001年)

愛。愛の物語です。ゴージャスな衣装、ハデなメイク、キレッキレの音楽に飾られた、純粋な愛を語った映画……という紹介を、発達障害のせいか愛について実感出来ない私に書かせるくらいに、愛に溢れた作品なのです。

映画を観ることで変わる世界

カルト映画のような強烈な作品を観た時、ショックを受ける場合があるかもしれません。しかし、同時にその人の世界観は確実に広がっています。それだけの熱量が作品に備わっている証拠ですし、その熱は観た人にも伝染していくものです。

それはライティングにおいて、文体の勢いや熱さとなって現れてくることでしょう。
さらに、世界観の広がりは新たな視点に繋がり、文章全体に奥行きをもたらしてくれるはずです。

この10作品が、貴方の書く文章を輝かせる切っ掛けとなれば、これに勝る喜びはありません。

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