私は大阪ものかき隊の隊員である。
まさか自分の人生で“隊員”を名乗る日がくるなんて、思ってもみなかった。
“隊”といえば軍隊、自衛隊、機動隊…命がけの職業ばかりだからだ。
命をかけて何かをするということは、自分の性分的にまずないと思っている。
だが3か月前、私は“隊員”になった。
きっかけはライターを志したことである。
2019年。
突如得体のしれないウィルスが現れて、私たちの生活は大きな変化を強いられた。経済活動が滞り、休業に追い込まれる飲食店、操業停止を余儀なくされる企業。私の勤務先は請負という業態であるため、クライアントの動向に影響を受けてしまう。「休業」の2文字が聞こえ始めた。
これまで転職を何度かして、就職氷河期を生きてきた。終身雇用などないものと思っている。
それでもこんなにも突然、雇用の危機が訪れるとは考えていなかった。
当時私はファイナンシャルプランナーの資格取得に向け勉強をしていた。資産運用の分野に「リスクの分散」というものがある。逆の値動きをする金融商品を同時に運用し、損失のリスクを低減させるのだ。
リスクの分散は、より日常に密接な「働く」ことにこそ必要なのではないか。
危機を感じていた私は、もうひとつ仕事を持つことに決めた。
そこからwebライターを知り、紆余曲折を経て今に至る。
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2021年は孤独な年だった。
企業にテレワークが推奨され、勤務先もそれにのっとった。家でひとり仕事をするということは、社会からはじき出されたような気持ちになる。この時ほど日常の何気ない会話が恋しいと感じたことはなかった。
退職を考え始めていた私は、退職後ライター業だけでどの程度やれるか試してみたいと思うようになっていた。
だが困ったことに、ライターはひとり孤独に向き合う職業だ。加えて右も左も分からない状態では、早々に詰んでしまうだろう。私はライターのコミュニティに入ることに決めた。
Webの世界にはコミュニティが溢れている。
「スキルアップ」を謳っているところや「収入アップ」を謳っているところなど、志向もさまざまだ。私はあまりお金にガツガツしていない、健全なコミュニティに入りたいと思っていた。「できればオフラインで」という希望も交え、近隣で立ち上げられたコミュニティを探していたところ、「大阪ものかき隊」にたどり着いた。
早速、サイトに掲載された隊員のプロフィールを覗いてみる。
隊長は本田もみじ氏。見るからに知的そうな、“デキる女”といった印象だ。
マネージャーの小田氏は元新聞記者とある。
隊の目玉という、編集校正部部長・南部氏も経歴がなんか色々とすごい。
「〇ヶ月で〇〇万円」などという、胡散臭い文句も書いていない。
きっとここは健全なコミュニティに違いない。
(我ながら単純な思考回路だ。)
現在は完全オンラインとのことだが、入隊してみることにした。
入隊の必須条件である事前説明会に参加し、晴れて12期隊員となった。
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大阪ものかき隊では、入隊後3か月間は月に一度の基礎講座を受けることになっている。基礎講座では、文章力を上げるためのテクニックの話は一切なく、ライターとしての方向性を見極める期間という位置づけだ。
一回目の基礎講座では、ライターとしての「世界観」と「成功の定義」の話があった。
世界観と成功の定義がズレていると、その人は成功しないのだという。恐ろしい話だ。
上記を踏まえ、各自スローガンを考える。
「〇〇の〇〇を〇〇する」の〇〇に、自分の好きなもの、得意なこと、なりたい姿などを当てはめて原型を作るのだが、これが全くといっていいほど思い浮かばない。当時は貰った案件をこなすことに精いっぱいで、世界観など考えたことがなかったのだ。同期の隊員の中には、すでにある程度世界観が固まっている人もいた。
「今は決められなくてもいいけど、2か月後には言えるようになっていましょう」
基礎講座・最終回までの宿題となった。
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大阪ものかき隊は初めに抱いた印象通り、「健全なコミュニティ」だった。
編集校正部、Twitter部などいくつもの部活が存在し、週に一回程度は何かしらの部会が開かれている。
Slack上では有益な情報をシェアし合い、オンラインジムでは、月ごとに書いた文字数を報告し合う。本当に勉強熱心な隊員ばかりだ。
ライター案件は「部外秘」が多いという特性上、他の隊員が書いた文章を読む機会はあまりない。そこが残念なところなのだが、先日大阪ものかき隊・公式サイトに「メンバーズインタビュー」なる記事が公開された。隊員・桐嶋つづる氏が、隊長・本田氏を深堀りするというインタビュー記事だ。
記事では本田氏のマーケティング思考のルーツから少女時代にいたるまで深堀りしている。本田氏はとても多才な方だ。そのルーツを知ることができるのは大変興味深く面白い。しかし、面白いだけではない。桐嶋氏の本田氏に対する愛と本田氏の魅力を発信したいという情熱がすさまじいほどに感じられるのだ。
桐嶋氏の話は一例である。隊員それぞれの、部会での何気ない言動や、日々の発信からものを書くことへの熱い情熱を感じ取ることができる。
冒頭で“隊”とつくものは命がけの職業ばかりと書いた。(あくまで自分調べだが)
ライターという職業で命を取られることはまず…というか絶対にないだろう。
大阪ものかき隊の隊員においては、自分の表現を追い求め、書くことへ並々ならぬ情熱を注いでいるという点で“命がけ”という表現もあながち間違っていないのではないかと思う。
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先日、ものかき隊基礎講座の最終回が開催された。
第一回目から2か月。私の中で、“こうありたい”というライター像が固まりつつあった。
外さないライターになること。
クライアントの意図をしっかり汲みとって、記事にする。
読者には記事を通してプラスの感情を抱いてもらいたい。
読者が満たされれば、きっとクライアントも満たされる。私も満たされる。
“満たされる”の連鎖でどんどんプラスの感情を生み出していきたい。
私はそれを“心を彩る”と表現することにした。
“寄り添うことばで心を彩る”これが私のスローガン。
成功の定義は“引き合いの多いライター”になること。
心を彩る記事が書けていればきっと引き合いの多いライターになれると思う。
“満たされる”の連鎖だ。
スローガンはまだ発展途上だ。その時々の想いをまとわせて育てていきたいと思っている。
いつの日か “命がけ”に成長を遂げるときが来るかもしれない。