いやあおもしろかった。
ZOOMラジオ、最高です。これちょっと流行らせようかなって、真剣に考えてます。
ものかき隊で月1回もたれる交流会のミニワークだったんですけどね、今はコロナ感染症対策のためオンライン開催で。ZOOMというビデオ通話のツールを使ったのですが。
ビデオ通話なのに、テーマが「ラジオ」だったんですよ。音だけですよ?
音がどうやって「ものかき」のワークにつながるんだ? シナリオの作り方? とかぼんやり考えて参加したら、見事に裏切られました。それも、すてきなかたちで。
ZOOMでラジオ番組をつくる!
ZOOMのワークで開催されたラジオ番組は、ガチでした。
ものかき隊には、実は二人もプロのラジオパーソナリティがいます。そのおひとりが、マジで80分の番組を構成してくださって、もうひとりのパーソナリティと一緒に場をつくりあげてくださいました。
冒頭はなんとラジオCMからのオープニングトーク。BGMもついて、流れるようなコマーシャルトークが入ります。ものかき隊の根城OBPアカデミアがばっちりスポンサーとして紹介されてます!
そして番組の前半は、やはり今の流行を逃さないということでしょうか、ウイズコロナの流れから「コロナの自粛中に買ったもの自慢」。こちらは参加した隊員を一人ずつゲストに迎えてのトークです。
もちろん完全生放送。
参加者全員いきなり振られたお題に目を白黒させながらでしたが、まあいろいろと出るわ出るわ。
アロマやテーブル、パン焼き機にフライパン、屋内用のドローンなど、家の中を充実させるもの。
産地応援やオンライン宿泊など、コロナを縁につながったもの。
ブートキャンプに走ったり、レシート整理に目覚めてファイルを5冊も揃えちゃったり、車を買っちゃうなど桁違いの人もいたりして、大笑いさせてもらいました。
またまたCMが入った後(こんどは我らがものかき隊のPR!)後半は、パーソナリティお二人のかけあいトークです。
こちらのお題は「コロナを斬る!毒舌トーク」。リスナーになった参加メンバーがチャットで書き込む話題を拾いながら気の向くままに話すスタイルです。
自粛警察やアベノマスクなど、文字にすると重たくてきつく当たりがちなものが、ゆったりとしたラジオトークになると粋な笑いに昇華されていくのを感じました。参加メンバーは聴きながら、ノリノリでチャット画面に合いの手を入れていきます。ニコ動のラジオ版みたいなもりあがり。
最後の締めは「コロナで転ばないよう、がんばろう!」
コロナでコロブナ。うん。がんばろ。
声だけになったときのことばのチカラ
まあなんと贅沢な「ラジオの時間」だったことか。と、今回の話はこれに尽きるのですけれども。
新鮮で面白く感じたのはなぜなのだろうと、ZOOMを閉じてからつらつらと考えていたんです。
なんとなく、ビデオ通話の新しい使い方を発見した気がして。
ZOOM自体は、ごくふつうの使い方でした。パーソナリティとゲストが話している映像を他の全員はミュートにして観ながら聴いているスタイルです。
ただ、通信回線が安定しないために映像を切って参加していた人がゲストになって、目が追いかけるものを失ったとき、ものすごく「ラジオ感」が出たんです。
それで、「おお?」って思って、そのあと目をつぶって聴いていたら、なんだかいつもよりことばがしっかりと頭に入ってくる気がして、とても新鮮でした。
また、画面をあまり見ないようにして聴きながらチャットにコメントを入れていると、トークに参加している感覚も、リスナーどうしがつながっている感覚も、画面越しにうなずきながら聴いているときより強いような気がしてきました。
* * * * *
「ZOOM疲れ」ということば、聞いたことがあるでしょうか。
リアルで会って話すと全身で空気感を共有できるが、ビデオ通話だと限られた視覚情報と聴覚情報だけでコミュニケーションをとるため、理解にエネルギーを使ってしまうという話。
「ZOOMあるある」だと漠然と感じていたのですが、これ、もしかすると勘違いだったのかもしれないなと思ったのです。
視覚と聴覚の2つの感覚「しか」使っていないから疲れるのではなくて、2つの感覚「両方を」全力で使おうとするから疲れるのではないかと。
ラジオだと、聴くことだけに集中するから、自分の考えが動き回る感覚をしっかりと感じることができます。手を動かしてチャットに入れてリアクションすることもできます。むやみに表情をつくったり、相手の表情を読み取ったりしなくてもいいから、気を使わずに話の内容に集中できます。
もしかして、声だけのほうが、しっかり頭に入るのかもしれないなって。
コミュニケーションのスタイルとして、声だけだからこそ伝わるものがあるのだというのは、いまさらながらかもしれませんが、私にとっての大きな発見でした。
場の楽しさはパーソナリティの「うなずき力」
とはいうものの。
声だけだったらなんでもいいわけじゃないです、もちろん。耳にする話し方がいいわけだし、話されていることばの選び方がいいわけだし。
ラジオトークを観察していて気づいたもうひとつの発見は、相槌でした。
さらっと聞き流すとまったく気づかないけど(むしろ気づかないくらいにさらっとしているのが実力なのだろう)、絶妙のタイミングで、ゲストがトークしやすいように声をかけていきます。
それってどんなもの? 色は? においは? 味は?
それを買ってどうだった? 今までと比べたら? ちなみにこれは?
楽しかった? うれしかった? ご家族の反応は?
周りはどんなコメントを? それはさぞかし~~でしょうねえ。
みなさんにおすすめできそう?
声だけでイメージする場合、具体的な形をいかに想像できるかが鍵になりますが、うまくその要素をゲスト自らのことばで形にできるよう、さりげなく話題をつなげる形で誘導しています。
耳でことばを追いかけるだけで、状況が立ち上がり、いきいきと動き出してきます。
ものかきという身から無粋な話をすると、話の接ぎ穂のつくりかたという意味では、この力はまさしくインタビューなどに必要となる取材力そのものだと感じました。
突然振られたゲストとのトークを、うまく相手をノリノリにさせながら面白い話題を引き出していく。ものかきは後からゆっくりことばをさがすことができますが、ラジオはそれを瞬発力でこなしていくんです。
たいへんな力です。
おもしろがって参加メンバー全員がゲストになって楽しませてもらっちゃいましたが、すごいエネルギーが必要だったのではと思います。
プロのすごさをみた気がしました。
おつかれさま、そしてありがとうございました。
ものかきの基礎体力は文字打ちだけにあらず
ZOOMラジオでは、最後にパーソナリティのお二人が、それぞれラジオでトークするときのことばの用い方について、ポイントとなるところを教えてくださいました。
おひとりは、話の継ぎ方、具体的な描写の大切さについて。もうおひとりは、言葉の表現が聞き手に与える印象について。ポイントとして挙げた方向は異なっていましたが、図らずも2人が強調していたのは事前の準備の重要性でした。
どれだけの風呂敷を広げて相手を心地よくさせられるか。相手も気づかないところにアプローチしてことばを引き出せるか。そして、引き出したことばを具体的にイメージしやすいかたちにして聞き手に届けるか。
ものかきに必要なチカラも、きっと同じようなものだと痛感しました。
文法を知っているだけ、語彙力があるだけではだめ。また、起承転結の並べ方を知っているだけでも、相手に響くことばにはなりません。
いろいろな人とつながり、心地よい場をつくる中で、相手のひきだしからことばを引っ張り出して自分の引き出しを増やしていく。日々の繰り返しがあってこそ、ことばの森を深くして土壌を豊かにし、さらに相手をノリノリにさせてことばを引き出せるようになってくるのでしょう。
ラジオのプロにはほど遠くても、日常のちょっとしたやりとりのなかでは、私も立派なパーソナリティです。
会話につきあってくれている人をゲストとして、ことばをしっかり引き出していくうなずきの練習を、ものかきの基礎力に加えていきたいなと思いました。
またやりましょうね、ZOOMラジオ!