はじめまして、大阪ものかき隊11期生の桐嶋つづるです。
ライター歴は3年。「シニアの暮らし・生き方」「定年前後の新しい働き方」など、主にミドル・シニア世代の暮らし系のウェブ記事を手掛ける、いわゆる「商業ライター」として活動しています。
私が大阪ものかき隊に入った理由、それは漠とした不安からでした。
「〇〇のことならいくらでも書けます!」という世のライターさんがよく発する言葉。
それを聞くたびに、いつもモヤモヤとしたものが心の中に広がっていたのです。
「私には熱く語れるものや、『書きたい』ものがない・・・」
「こんな自分は商業ライターとして大丈夫だろうか?」
しかし、入隊した今、こんな思いが芽生えました。
書きたいより「書ける」私になりたい―――
なぜその思いが芽生えたのか、どのような思いの変化があったのか、大阪ものかき隊で学んだことを通じてお話していきます。
あきんどライターは「核のかけ算」で勝負する
「まいど!」「おおきに!」
威勢のいい声があちらこちらで飛び交う。
あきんどライターは、多種多様なお客さんの要望にもバッサバッサと切り返し、見事な記事を書いてはお客さんをとりこにしている。
ここは「大阪ものかき隊」、いや「大阪ものかき横丁」といってもいい!
そんな活気のある風情が漂うコミュニティに、私はすっかり魅了されました。そして所属しているライターさんは「あきんど(商人)」のように活き活きと活動しています。
なにより、あきんどライターの生み出す「多種多様・多角的な記事」には本当に驚くばかりです。その手法がどうしても知りたくて、私は入隊当初からずっと観察を続けてきました。
ここで私が見たあきんどライターの手法をご紹介します。
◇◇◇
【あきんどライターの手法】
ある経験の「核」を捉え、自分の中に蓄積していく。
そして客のニーズに合う自分の中の「核」をかけ合わせ、新たな記事を生み出す。
※「核」とは、例えば「趣旨」「着眼点(切り口)」「背景」など、モノやコトの表層部分ではなく、中心となる要素のこと。
◇◇◇
あきんどライターは、「核のかけ算」で、ニーズに合った記事を生み出している。
逆を言うと、
・「核」を捉える思考
・「ニーズ」ありきの姿勢
・「核のかけ算」スキル
・書く筋力
これらを備えているのがあきんどライター、つまり「腕利きの商業ライター」なのでは?
これが私のあきんどライターに対する考察です。
あきんどライターになるための学び
そしてものかき横丁には、あきんどライターになるための学びの場がしっかりと用意されていました。
・「核を捉える思考」を学ぶ:ライター養成講座
ライター養成講座はまず「自己分析」から始まります。自分はどんなライターなのか、足元を掘り下げます。自分の本質、つまり「核を捉える思考」と重要性を学びます。
・「『ニーズ』ありきの姿勢」を学ぶ:マーケ部&Twitter部
自らのもつ「核」をどのように有益な情報に還元すべきか。また共感してもらうためにはどうすべきかをマーケティングやSNS活用を通じて学びます。例えばTwitter。1人よがりの投稿では「いいね」されません。これは私自身も痛感しています。こういったことからも「『ニーズ』ありきの姿勢」を学びます。
・「核のかけ算」スキルを学ぶ:編集校正部
編集校正者の目線で、「執筆」「推敲(すいこう)」について学びます。記事の「核」(趣旨・着眼点・背景など)「構成」「文の型」「言葉」「言い回し」「表現方法」などを合わせて学ぶことで、「核のかけ算」スキルを総合的に磨きます。
・「書く筋力」をつける:オンラインジム
ライターが「書いた文字数」を報告し合うシステムです。書き続けることでスキルが上がり、人の目にさらすことでモチベーションも維持されます。「書く筋力」を鍛える場です。
新規隊員は、ひとまずどの学びも経験することになっています。私もじわじわとあきんどライター精神が宿るのを感じられました。
書けない私は、経験を垂れ流す
では、この「ものかき横丁」を訪れる前の私はどうだったのでしょうか?
「書きたいことがあるのがライター」と思っていたくらいです。まず「『ニーズ』ありきの姿勢」という視点が欠けていたのは間違いありません。そしてモノやコトを表層と中心に分け、「核を捉える」ということも全くできていませんでした。
例えばこうです。
今「ウェブライティングでお金をもらう」という経験をしたとします。
あきんどライターであれば、この経験から「核」を捉えます。
《核の例》
・収入を得る
・創作活動
・在宅ワーク
・副業
・参入障壁
そして次のニーズに沿ったテーマと、自分の中にあるそれに見合った「核」とをかけ算。「テーマ×創作活動」「テーマ×在宅ワーク」ではどうだろう?といった具合に、「経験」をどんどん記事作成に生かします。
一方私は、
・ウェブライティング
・仕事
・嬉しい経験
このような経験の「表層」をそのまま記憶するのみ。もちろん「かけ算をする」ということもしません。
自分の経験と完全一致した記事を求められる、それはまれなことです。また依頼内容が私の経験から少しでもずれていれば、それは「書けない」ということになってしまう。これでは貴重な経験を垂れ流しているようなもの。宝の持ち腐れです。
書きたい気持ちが邪魔をする
あきんどライターを研究する中でもう1つ気付いたことがあります。
どのライターさんからも、「書きたい」「熱い思いを語りたい」という妙な欲が見えないのです。厳密にいうと「書きたい」と思うことはあると思います。でもそれを「感じさせない」のです。
店員さんがもし「売りたい、売りたい」と近づいてきたら、一目散に逃げたくなりませんか?それと同じで、「私はこれが書きたいの!」とばかりに、ニーズを無視して自分のいいたいことを優先する記事には誰も興味を示してくれません。その気持ちが邪魔をする。
商業ライターは「商人」であれ。売りたい気持ちはそっと置いておいて、客のニーズに合ったものを提供できる。結果的にその姿勢が客をとりこにさせ、引く手あまたのライターとなる。
「書きたい」は置いておこう。
あきんどライターは背中でそう語っていました。
「用の美」を生むライターになる
「〇〇のことならいくらでも書けます!」
この言葉を私は完全に履き違えていました。
自分中心な思いを熱く語る意の「書きたい」ではなく、「核のかけ算でいろんな記事が生み出せます」という意の「書ける」。
私が不安に感じていた世のライターさんの言葉は、本当はそんな意味だったのかもしれない。そう思うようになりました。
◇◇◇
民藝運動の父と呼ばれる柳宗悦の言葉で「用の美」という言葉があります。柳宗悦は、生活道具としての民藝品に新たな価値を見いだしました。実用性の中に「美しさ」はあるとたたえたのです。
あきんどライターが生み出す記事は、まさにこの「用の美」。人のニーズに見合った、実用性の中の美である「記事」。それを生み出すのが商業ライター。
私も「用の美」を生み出したい。
書きたいより「書ける」私になりたい―――
大阪ものかき隊に入隊して3カ月、誠に勝手な考察で恐縮ですが、私にはそんな思いが芽生えました。
私の学びはこれからもずっと続きます。
いつか私も「あきんどライター」になって、ものかき横丁でこう言いたい!
「まいど!」「おおきに!」