どーも、スンダヴです。なんとなく体を鍛えたいと考えていますが、何をするか悩んでいます。
「発達障害×生き方」記事第4弾は、服飾関係の仕事に就いているOさん(仮名)です。
発達障害当事者にとって、「仕事にどう取り組むか?」は大きな悩み。しかし、Oさんは22歳の若さで①一般就労での就職活動②3年近く勤め上げる③転職を経験し、いずれも成功させています。
今回は、そんなOさんに「特別なスキルを持たない発達障害当事者が一般就労でどう生き抜くか?」を語っていただきました。Oさんへのインタビューを通して、発達障害当事者が自分らしく働く方法が見えてきた気がします。
私の厳選おすすめ本
その子、発達障害ではありません IN-Childの奇跡 [ 韓昌完 ] 価格:1,620円 |
うつ病、専門学校中退、母親との対立…22歳女性が発達障害と診断されるまで歩んだ道
Oさんは去年の夏ごろ、ADHD(注意欠陥・多動性障害)と診断されました。
「言語性優位の特性が強く、しっかりしている人だという評価をよく受けます。しかし、上下関係や暗黙の了解などを読み取るのが難しく、上司と飲みに行った後《どうしてあのような態度、言動をしたのか》と言われました。マルチタスクにも問題があり、3つ以上のことを言われるとどれか1つが頭から抜け落ちます」
ほかにもケアレスミスや感覚過敏に悩むOさんですが、実は診断以前から発達障害の概念は知っていました。ADHD,ASD,軽度知的障害を併発する弟がいたからです。
「より重度な症状を持つ弟と過ごしてきたので、逆に自分は発達障害ではないと思っていました。母親もそう思っていたらしく、結果的に見過ごされました。
一度検査が行われたときもありましたが、簡単な聞き取り検査で終わりました」
やがて高校を卒業する時期となり、進学先を模索するOさん。しかし、そこで母親と対立することになります。
「母親は、大学に入学させてゆくゆくは弟の面倒を見させたいと考えていたようです。しかし、お金がなく進学校入学を断念させられたこともあり、《大学に入るための資金がなく準備も整っていない》というのが正直な気持ちでした。
発達障害であると気づいてはいませんでしたが、スピード感のある仕事が苦手、人付き合いを好まないという自分の特徴は知っていたので、それにあった仕事を選択したいと考えました」
このような思いから、Oさんは家を出てデザインを学べる専門学校へと進学しました。デザイナーの仕事に興味があり、自分が苦手とするマルチタスクやコミュニケーションを避けながら仕事もできると考えたからです。しかし、結果的に2年半で中退することとなります。
「まず専門学校に通っているほかの学生とうまくいかず、避けるようにしたら友達はいなくなりました。チームで製作に取り組む課題でも、ほかのメンバーが自分の考えをまったく持っていなかったのでしょっちゅう衝突しましたね。
決定的な理由は、学費を稼ぐためのアルバイトと授業の両立があまりに過酷で、うつ状態になってしまったことです。
最終的に、眠気覚ましのカフェインなどを過剰摂取したことによるオーバードーズで病院に担ぎ込まれました」
心身ともにぼろぼろになってしまったOさん。母親とも半ば絶縁状態となってしまいます。
「私の中退を知った母親が家にやってきましたが、大喧嘩の末家から出ていきました。母親は私が《普通の人》であるという意識を強く持っており、なぜうつ病になったのかも理解してくれなかったからです」
Oさんに残されたのは、5万円の生活費だけでした。
生きるために働く。発達障害の生きづらさを乗り越え歩んだ就労への道
働かないと立ち行かなくなる。そのような状況下から仕事を得るために、Oさんは活動を始めます。
「これまでは、アルバイトの面接もバックれるなど働くことにあまり熱心とかいえませんでした。でも、《働かないと死ぬ》という立場になるとさすがに違いましたね。
条件は、専門学校中退という自分の経歴でも足切りされないところです。いろいろ受けて、百貨店で服を販売する会社に採用されました。契約社員としてでしたが、これまでバイトしかしてない私にとって破格の条件でしたね」
仕事を選ぶにあたって、Oさんがもっとも重視したのが会社の価値観だったそうです。
「服の販売といっても、一般的な販売員とは少し違いました。商材は単価が高く、3~50万円ほどです。商品一つ一つに著名なデザイナーがかかわっており、彼らの略歴までしっかり把握しないと売れません。
ともかく商品を売りさばくというより、大金を払って服を買ってくれる常連客とどれだけ親しくなれるかが勝負でした。
そのような事情からか、《無理して売りつける必要もないし、金額に納得しない方に買ってもらうこともしなくていい》という価値観をもっている会社だったので、自分とぴったりだなと思って応募しました」
自分の価値観とあっている。それが図にあたったのか、Oさんは2年半をこの会社で過ごすことができました。
「専門性の高い会社だからか、癖の強い人が集まっていました。癖や個性というものに寛容で、なじみやすい職場でしたね。
発達障害の特性として《ミスをしたときに言い訳や否定をしてしまう》というのがありますが、私がそれをしたときも上司が辛抱強く指導してくれました。
そのおかげか、自分が苦手なことははっきり言い切ってほかの人に助けを求める習慣が身につきましたね。客層は裕福な方が多く、鷹揚でミスをしたときにも怒鳴る方は少なかったです」
自分あった状況に落ち着くことで、Oさんは次第に職場で頭角を現していていきます。半年で正社員に昇格し、商品知識も積極的に吸収してベテランと肩を並べるほどになりました。商品説明を行うブログが評判になり、指名してくれる常連客も現れます。
昇給も行われ、インセンティブも獲得するなど順調にキャリアを積み上げていくOさん。しかし、2年と半年が過ぎたころに解雇を通告されます。
「売り上げが悪いわけではなかったのですが、関東にある本社の都合で店舗を閉めることになりました。
関東で働くという方法もあったのですが、ちょうどそのころ発達障害と診断されたのもあり、《このまま今の仕事を続けた場合、マルチタスクが増えて負担になる》と思いやめました。
閉店まで働きながら転職活動をすることになったのですが、面接のため早退することを認めるなど最後まで融通の利く職場でしたね」
こうして、転職活動を始めることとなったOさん。経歴や年齢で落とされる会社もありましたが、これまでの経験を生かした会社選びで内定を獲得できました。
「独立のための経験を積める、貯金ができる、スキルアップができるが条件です。大手は全落ちし、最終的に貴金属を販売する会社に転職することになりました。
セミオーダー制のニッチな会社なので、これまでやってきたことと似ています。ADHDの人間は、好きな方面に進んでいく力があるので、得意不得意を見極め、自分の興味のあることで仕事を選べばいいと思いますね」
Oさんの目標は、少人数で独立し、小さくまとまった環境で暮らすことです。
「人並に暮らせるレベルの収入をコンスタントに稼いで、静かに暮らしたいですね。多くの人の手本になれるような人間でもないので、右腕になってくれる人が2~3人いてくれれば十分です。身内に信用できる人がいないというのもあり、結婚もしたいと考えています」
新たな道を歩む彼女が考える、発達障害当事者が一般就労で生き抜くコツ
Oさんは、「発達障害は一芸に秀でている方やクリエイティブな方がクローズアップされるが、大多数は普通の人間である」という思いを持っています。そのような人間が一般的な就労を生き伸びる方法として、以下のような手法があると語ってくれました。
就職活動について
「小さい会社で、一点集中型のキャラを目指すのがいいと思います。社員数は数千人でも、一つ一つの店舗には社員が数人しかいないという環境もいいです。
給料そのものは少なくても、インセンティブや昇給が充実している仕事なら収入も安定します。薄利多売な所よりも、単価が高額で一人一人のお客様に集中できる業態なら、マルチタスクの負担も減りますね。会社の価値観が自分に近い、融通の利きそうな人が職場に多いかが重要です」
発達障害当事者は、既存の就職活動には向いてないというのがOさんの考えです。
「やりたくないことをやると、極端にパフォーマンスが落ちるので向いてないですね。やりたい仕事がないならお金が続くまで考えるという手もあると思います。
無理して就活する必要はないし、環境ガチャに失敗したら素直に逃げていいです。興味のある分野があるなら、早い段階から動き出しましょう」
就労について
「プライドを捨てて、《愛される無能》みたいなデフォルメしたキャラを目指しましょう。苦手な分野は正直に言う、得意な事には全力、謙虚さを忘れないを徹底すればなれます。少人数制の職場の場合、自分のキャラをはっきりさせた方が認められやすいです。
人数が少ないと、協力し合わないと仕事が回らないですからね。《これはできないけどこれができる》というのを認知してもらえるようにしましょう。
ただし、5~60代の年配の方は、体育会系で障害に対する理解も乏しいのでわかりあいにくいです。3~40代は柔軟な方も多く、アドバイスもしてくれます。」
苦手な分野の開示が最大のカギというのが、Oさんの考えです。
「クローズ就労の場合は、《障害の事を言わずに自分の苦手分野をそれとなく伝えるスキル》が必要だと感じます。ちょっとしたいじられキャラのポジションですね。
私は、複数の事を同時に伝えられるのは苦手なので《すいません、忘れるので一個ずつ言ってください》と正直に伝えています。できないことはできないけど、その分で他で結果をだすという割り切りが大事です」
転職について
「私の場合は、最初の職場が運よく相性が良かったので、似たようなところで職場を探しました。転職エージェントを使う人も多いですが、大げさに売り込んでいる場合も多いので注意が必要です。
得意不得意はある程度分かっていると思うので、価値観が通じ合う職場で自分が役に立つことを模索しましょう」
転職先を選ぶ際に重要な要素は、以下の3つであるとOさんは考えています。
・単価が高く、一人一人に注力することで目的を達成できる
・嫌な客とは付き合わないなど、相手を選べる
・作業量が比較的少なく、待機が長い
まとめ
様々な生きづらさを乗り越えて、自身のキャリアを確立することに成功したOさん。
・自分の得意不得意をはっきりさせる
・価値観に合った環境を選ぶ
・苦手分野は開示し、得意分野で会社に貢献する
この3点が、発達障害当事者の就労に対する悩みを解決するヒントであると感じます。自身の可能性をあきらめず、価値観にあった働き方ができるよう僕も頑張りたいです。