健康はお口から(1)に続き、今回も口腔ケアを紹介したいと思います。
昨年の話になりますが、私は、大阪府立大学で開催された公開講座を受講しました。講座名は「口からの健康法」。総合リハビリテーション学研究科 教授、小川由紀子先生の講座です。
今回の(2)では、公開講座で教えていただいた、舌の苔のお話、すぐできるお口の体操、を紹介します。
口の中のお掃除方法 舌苔(ぜったい)はどうすればいい?
まずは、舌のお話です。
舌苔(ぜったい)とは何か
舌苔とは、舌に食べ物カスや剥がれた細胞が溜まったものです。舌の表面がうっすらと白くなっている状態は健常です。しかし、白くべったりとこびりついている状態であれば、ケアする必要があります。
口の中が唾液で潤っている健全な状態では、舌苔がこびりつくことはほとんどありません。病気や口呼吸の影響で、唾液の分泌が低下し、自浄作用が低下したために、舌苔がこびりつくと考えられています。
小川先生のお話では、こびりついた舌苔は適度に掃除する方が良い、とのことでした。
さあ、まずはご自身の舌をチェックしてみて下さい。
舌苔のケア方法
チェックしてみてどうでしたか。気になるようであれば、軽くお掃除しましょう。
小川先生のおすすめは、専用の舌ブラシを使う事でした。調べてみると、100均でも売られています。歯ブラシでゴシゴシするのは、傷つけてしまうのでNGです。舌ブラシを使って優しくこすり落として下さい。あくまでも優しく丁寧にお願いします。
そして、神経質に掃除しすぎることもNGです。体調が悪かったために、舌苔がいつもよりついている程度であれば、放置していて大丈夫です。体調が戻り、再び口の中が健常な状態になれば、舌苔は自然に元通りになります。
舌が正しい位置で維持されていると、摩擦が生じるので、余分な舌苔は自然に取り除かれるのです。
咀嚼力(噛む力)と嚥下力(飲み込む力)を維持しよう
次は「噛む力」について。
誤嚥(ごえん)が起こる
誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)という言葉を耳にしたことがありますか。
食道ではなく気管に食べ物が入ってしまい、その先にある肺に炎症を起こしてしまう状態です。飲み込む力が弱くなったことが原因です。
入院中のお年寄りだけに起こること、ではありません。
実際には、どんな人でも、加齢とともに噛む力や飲み込む力が弱ってくるのです。
私自身、50歳を過ぎて、「食べ物が口からポロリとこぼれる」と感じるようになりました。その昔、先輩が同じことを言っていました。加齢により、口を閉じる力が、昔に比べ弱くなっているのかも知れません。
食事のたびに口を押えなければいけないのでしょうか。
いえいえ、そんなことありません。
噛む力と飲み込む力を維持する体操を紹介します。パタカラ体操です。
パタカラ体操
体操はとてもシンプルです。パ・タ・カ・ラと、順番に声を出すだけです。
パパパパパ、タタタタタ、カカカカカ、ラララララ、と、ひとつずつ、ゆっくりしっかり5回繰り返しましょう。
「パ」は破裂音です。唇をしっかり閉めて出す音です。閉める筋力を鍛えます。
「タ」は舌を上あごにくっつけて出す音です。舌の筋力トレーニングになります。
「カ」はのどに力を入れ、呼吸を止めて出す音です。誤嚥を防ぐトレーニングになります。
「ラ」は舌先を前歯の裏にくっつけて出す音です。舌の筋力トレーニングになります。
声を出すので、どこでもできるとは言えませんが、食事前のトレーニングがお勧めです。
声を出しながら、どこが鍛えられているかを意識することも大切です。
舌の筋力を鍛えよう
筋肉を鍛えることも重要です。
舌は筋肉でできている
舌は横紋筋という筋肉で出来ています。そして、筋肉は鍛えることができます。
小川先生は、舌筋を鍛える体操を教えてくださいました。
元々、口呼吸を止めさせるために考案された体操ですが、リハビリにも利用されています。口の周りの口輪筋、舌筋に効果があります。それが、あいうべ体操です。
あいうべ体操
顔と舌の筋肉を使って、あー、いー、うー、べー、と言います。この体操は声を出す必要はありません。その代わり、筋肉を大げさに動かしましょう。
「あー」
のどの奥の口蓋垂が見えるくらい口を大きく開けましょう。
上あごと下あご、どちらの筋肉も使います。
約1秒キープしましょう。
「いー」
歯を見せて、口を真横に引っ張りましょう。
頬の筋肉、首筋の筋肉も意識します。
約1秒キープしましょう。
「うー」
唇を前に突き出しましょう。
口の周りの筋肉が収縮します。
約1秒キープしましょう。
「べー」
舌を思い切り真下に伸ばします。
舌の付け根が痛いかも知れません。
舌前面、付け根、横、など、舌全体を意識します。
約1秒キープしましょう。
唾液腺の刺激、パタカラ体操と同じように、あいうべ体操も食時前におこなうことをお勧めします。食事の時に使う筋肉が、動きやすくなることを実感できるでしょう。
まとめ
公開講座を受けて、死ぬまで自分の口で物を食べることの大切さを学びました。そして、口腔ケアの方法を学びました。口腔ケアを習慣づけたいと思います。
一説によると、老化は生まれた直後から始まっているそうです。
個人的な話ですが、50歳の手前から、これは老化現象かしら、と感じる機会が増えていました。当時は、老化はいやだと直感的に思い、それ以上考えることを避けていました。そうした意識が、公開講座を受講して変わりました。
メンタル面が、非常に大きく変化したのです。
まず、自分自身の老化を受け入れました。次に、頑張ってきた自分の筋肉を褒めてあげました。そうすると、「死ぬまで付き合っていく筋肉さん、これからもヨロシクね」という気持ちになれたのです。
そして、生活習慣に良い影響を及ぼしています。
私は、湯船につかっている時間を利用して、口腔ケアを行っています。
鍛えられる筋肉を鍛えることが大切です。ピンピンコロリへの準備は、50代から始めても決して早くはありません。